私は、毎月、京都吉兆各店を回りお客様の声を聞き、現場の方々と話合い、社員と共に試食をしています。
「更にお客様に喜んで頂くためには、どうすれば良いのか?」
料理、サービス、空間、料金など、全ての物事について考え、試し、反省し、繰り返し挑戦することに取り組んでおります。
その中で、鰹出汁を作り置きし、煮物椀を作っている店舗がある事を知りました。
嵐山店では、1組ごとに引き立てをお出ししているのですが、お昼だけで100名以上のお客様を対応する店舗では、それは出来ないという事でした。
当然、お昼のお客様用の鰹出汁は、初めのお客様に合わせ、まとめてお昼のお客様分引いております。
また、夜のお客様には、夜のお客様に合わせ引くなど、あらゆる工夫、努力をなしています。
日本中の殆どのお店は、そのようにされているとは思うのですが、時間が経つごとに鰹の微妙な風味が損なわれるので、私は鰹出しは、引き立てにこだわりたいと考えています。
更に美味しくするにはどうすればよいのか考え、試作し、共に試食してみました。
特選した鶏を使用したり工夫を重ね、鰹出汁以上に美味しい煮物椀が出来ました。
料理長も納得で、更に工夫を加える事になりました。
そして、話しを重ね、その結果、ご注文の少ない高額なコース料理は、引き立ての鰹出汁を使用し、数の多い御弁当などは、特選鶏のスープをベースにした煮物椀を提案してみようという事になりました。短い時間でも作り置きした鰹出汁を使わなくてすむ方法です。
特選鶏のスープをベースにした出汁は、実際凄くおいしく、加えてコラーゲンをたっぷり
ご提供できる為、更に満足していただけるのではないかと考えています。
そしてその上に、各店舗らしさを大切にする事を提案しています。
その事は、各店の料理長だけの采配ではなく、各店スタッフ全員で考える事が大切だと考えています。
サービスは、直接お客様の反応を聞いたり感じたりするわけです。
サービスの意見が大切なのは勿論、中堅の料理スタッフのアイデアや考えも聞く機会を 作ることで、現場が活気づくと考えています。
私もその中に入り、具体的な提案をさせていただきたいと思っています。
皆で決めていくプロセスを踏む事により、物事がどのように決まるのか、全社員にクリアーになると思います。そうして、今までのように偏った考えから脱出する為です。
これにより、スタッフ一同、同じ気持ちでお客様をおもてなしする事が出来ると思います。
そしてまたその連帯感がお客様に伝わり、感動を与える事が出来ると信じております。
そのため、最終の料理内容の決断をするのは、各店の特徴を一番理解している料理長に任せています。
そうしないと、そのお店らしさを表現できないからです。
因みに、下記は、昨日(12/21)昼終わりに行った、花吉兆店の試食献立です。
@鶏出汁ベース 大根 焼セリ 黒ペッパー
A鶏出汁ベース 牛乳仕立て
コンロ ぐじ蕪蒸し(フォアグラ入)
柚釜にて茶碗蒸し 蟹 穴子 百合根
すっぽん御飯 すっぽん塩焼き 牛蒡チップ 葱 赤出汁(温泉玉子) 漬物
オレンジシャーベットジュース果肉入 ミント
栗ぜんざい(栗温スープに小豆、 白玉)
下記は、昨日(12/21)夜終わりに行った、グランビア店の試食献立です。
煮物椀 海老芋餅 焼餅 鶏出汁ベース雪中吉野仕立 あられ三種
造里 明石鯛 対馬鰤 鯛皮せんべい
箸休 聖護院蕪シャーベット 金時人参ソース 柚
強肴 白味噌汲上湯葉フォンデュ(コンロ) 車海老 あこう 牛肉 志めじ ブロッコリー
御飯代り 白味噌汲上湯葉フォンデュ(コンロ) うどん 柚子胡椒
果物 フルーツグラタン バナナ 苺 ブルーベリー アボガド 林檎 ザクロ 白玉
この献立の料理を、各料理長、各スタッフ代表と私で試食しました。
そしてその場では、色々な意見、提案が出ました。
まだまだ、完成されていない物もあります。
現行のメニューに加えていこう、というものもありました。
こういう事が継続して実行され、お客様のお料理に反映され、繰り返し反省し、結果を出す事こそが、今後の京都吉兆を作っていくのだと確信しています。
勿論、お客様が、判断し選ぶわけですから、必要ないものは淘汰し、その地域や社会に必要とされる存在だけが、継続するのだと考えています。